公明党 浜四津敏子議員の質疑抜粋

第162国会 - 参議員 - 法務委員会 - 5号 議事録抜粋
平成十七年三月十八日(金曜日)
   午後一時開会
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
     政府参考人
       法務省民事局長  寺田 逸郎君

    ─────────────

浜四津敏子君 公明党の浜四津敏子でございます。

 本日は、私の元に寄せられました現場の声に基づいて質問させていただきます。
 まず第一点目は、重国籍について、国籍法見直しの観点からお伺いいたします。
 世界の各国は、その国の構成員となる国民の要件、範囲をそれぞれ決めております。各国の国籍立法は、その国の歴史や背景、政策により様々な内容となっておりますから、どの国の国籍も持たない無国籍者や、あるいは複数の国籍を持つことになる重国籍者が生じると、そういう結果を招来しております。

 日本では、国籍法の二条で原則として血統主義を取っております。この血統主義の中にも、父系、父親の方の父系血統主義と父母両系血統主義がありますが、日本は、一九八〇年に成立いたしました女子差別撤廃条約の批准を契機といたしまして、一九八四年に国籍法を改正し、それまでの父系血統主義を改めまして父母両系血統主義を取ることとなりました。この父母両系血統主義の国においては、父と母の国籍が付与されるために重国籍者が必然的に増えるという結果になります。そこで、日本は国籍法十四条で国籍選択制度を規定しております。日本は重国籍を認めない国でございます。

 そこで、現状を認識するためにお伺いいたしますが、一九八四年の国籍法改正から今日まで、この十四条の国籍選択制により国籍を選択した件数は何件に上っているでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君) 広い意味でのこの国籍の選択に関する届出と申しますのは、必ずしも重国籍でない者が外国国籍を取得した場合の選択も含むわけでございますので、トータルの数は昭和六十年から平成十五年までの間に四万四千人でございますが、今委員がお尋ねの、重国籍である場合に日本国籍を選択して、それから外国国籍を放棄し、あるいは外国国籍を離脱した者、これは同じ昭和六十年から平成十五年までの間に約二万二千人ということになっております。

浜四津敏子君 国籍法の十五条一項ではこのように定められております。法務大臣は外国の国籍を有する日本国民で十四条の期限内に日本の国籍を選択しない者に対して書面により国籍の選択をすべきことを催告することができると、こう定めておりますが、これまでこの催告は何件なされたのか、お伺いいたします。

政府参考人(寺田逸郎君) 催告いたした実績はございません

浜四津敏子君 同じく国籍法十六条一項で、日本国籍の「選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。」と、こうありまして、努力義務規定になっております。これを外国の国籍離脱したものとみなすとしなかったのはなぜなのか、外国籍を離脱しなくても法的に問題はないということを意味しているのか、お伺いいたします。

政府参考人(寺田逸郎君) これは委員も冒頭におっしゃられましたように、外国の国籍を離脱することがおよそできるかできないかということは、これは外国の法令で決まるわけでございまして、外国の法令の中には、およそ国籍の離脱を認めない場合、あるいは非常に条件が厳しい場合もあるわけでございます。したがいまして、離脱する意思を有していても離脱することが現実にできないということになりますと、やはりそれを強いるということはいかがかという観点からこの国籍法の十六条をあくまで努力規定にとどめていると、このように私どもは理解いたしております。

○浜四津敏子君 先ほどのお話ですと、日本国籍放棄した人の人数が二万数千に上っているということですが、好んで国籍、日本の国籍を離脱したという人はほとんどいないのではないかと思います。

 私のところに重国籍を認めてほしいという声が多数寄せられておりますので、そのうちの幾つかを御紹介いたします。

 初めのケースは、父親日本人、母親日本人の間に生まれた子、仮にAさんとしますと、幼少のころ家族とともにフランスに渡りフランスで教育を受けた、その後、父母は日本に帰国したが、Aさんはフランスに残り医学校に進んだ、日本国籍を捨てたくないのでフランス国籍は取らなかった、そのためフランスでは医者の資格が取れず、現在はパリの大学病院でやむなく麻酔医師として勤務している、日本が重国籍を認めていないため、Aさんは仕事、職場などで多くの制約があり、昇進もできないと、こう言われております。重国籍が可能ならもっと自身の力を有効に発揮でき、社会生活ももっと自由に豊かに送れるのに大変残念だと、こういう声でございます。

 もう一つのケースは、父親フランス人、母親日本人、その間に生まれたお嬢さん、フランスで出生したお嬢さん。この母親の日本人の方をBさん、娘さんをCさんと仮にお呼びいたしますけれども、この娘のCさんは日本とフランスの国籍を持っておりました。しかし、Cさんが二十一歳のころ日本から国籍選択の義務を再三手紙や電話で迫られて、フランスに居住していること、また将来の仕事のことを考えて苦渋の選択でフランス国籍を選択した、そのため日本国籍を喪失したけれども、最近日本で仕事をしたい意向がありこのCさんは日本国籍を失ったことを大変悔やんでいると、こういうことでございました。また、日本国籍のBさん、これはお母さんですけれども、この方もフランスで教師をしている、しかし正規の教員免許を持ちながらフランス国籍を取得しないために正式教員になれず給料も他のフランス人と大きな差があると、是非日本も重国籍を認めてほしいと、こういうお声でございました。

 最後に、もう一例お話しさせていただきます。

 このケースは、父親日本人、母親日本人、フランスに移住して三人の息子が生まれたそうでございます。そのうちの長男Dさんは、本籍地の法務局より国籍選択を通告されて生まれ育ったフランス国籍を選択した、親としては大変ショックだった。つまり、親は日本国籍ですから、息子が日本国籍を失ったということが大変ショックだったそうでございます。日本の国籍法というのは大変残酷な法律だと思ったというのがこの親の方のお話でございます。その上、その後、この長男のDさんは日本で就職が決まりましたが、日本国籍がないため、三年のビザは発行されますけれども、身元引受人の住民票あるいは源泉徴収票などを提出しなければならないなど、もうその手続が大変面倒だということで日本国籍を選択しなかったことを後悔していると、重国籍が認められていればこのような苦悩も苦労もなかったと、こういう声でございます。

 そのほかにもたくさん寄せられておりますけれども、時間の制約がありますので以上三例だけお話しさせていただきましたけれども、このように国籍の選択で悩み、苦労している日本人は多くおられます今後も重国籍の人は増えこそすれ減ることはないだろうと思います。
 政府は、こうした人たちの問題あるいは悩みをどのように考えておられるのか。人権尊重の視点から考え直すときではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君) 今三例を御紹介されましたけれども、私どもの方にもそのような様々な、実際にこの国籍をめぐって悩んでおられる、苦しんでおられる方々の声は聞こえてまいりますので、私どももその状況というのは承知しているつもりでおります。

 元々、この現在の新しい国籍法ができた際に、この重国籍をどう扱うかということはかなり議論があったところでございます。重国籍そのものをどういうふうに扱うかということは、これは時代時代において相当に考え方が違うわけでございまして、また国によっても、最近のヨーロッパの例を取りますと、必ずしも重国籍に厳しくない姿勢を示している国も決して少なくないわけでございます。

 したがいまして、私どももその動向に非常に注意を払っているところでございますが、先ほど申しました新国籍法ができました際は、なかなか、普通の生活をしている分にはなかなか実感しにくいところではございますけれども、一たび何か起こりますと、やはり国籍というのは国の基本単位でありますから大変に重要に考えて扱うべきだというところから、外交保護権の衝突の問題、あるいは身分関係の安定の問題、様々な議論があった末に現在の重国籍の考え方が取られたわけでございます。

 したがいまして、私どもも今後事態を注視してまいりたいと思いますが、その当時とどういう変化が生じたかというようなところも十分に考えていきたいというふうに考えております。

浜四津敏子君 治安や安全保障の観点から国籍は余り複雑でない方が管理しやすいという面もあることは確かでございますけれども、しかし、国籍問題は何よりもそうした事態に直面した日本人の方々が不利にならないようにすべきでございますし、また人権の面からももっと配慮したものにすべきだと思っております。
 また、一九八四年の国籍法改正から二十年、世界の国籍の扱い方の潮流も変わってきております。平成十五年の七月十五日、この参議院法務委員会における重国籍問題を検討すべきとの質問がなされたと記憶しておりますが、当時の森山法務大臣は、こうした問題についての国際的な動向を注目してまいりたいと当時答弁しておられます。その答弁以降、法務省として国際的な動向を注目して何らかの対応を取ってこられたでしょうか

政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども申し上げましたように、この問題については国籍をどう考えるかということが非常に大きいところでございまして、特に日本だけでなく諸外国の動向でございますとか、先ほど委員も御紹介になられました、いろいろ現実にぶつかるケースというのはどういうものがあるかということも非常に重要でございます。又は国民一般に国籍というものをどういうふうに考えるかということも非常に重要なことでございますので、それらについて検討を行っているという状況でございます。

浜四津敏子君 今言われました世界の潮流と言われるものは、この二重国籍を容認する国が先進民主主義諸国では大半でございます。例えばイギリス、カナダ、イタリア、オーストラリア、スウェーデン、ヨーロッパ、ロシアはもう既に容認しておりますし、条件付きで容認しているのがアメリカ、ドイツ、フランスなどでございます。逆に容認しないという国の方が先進諸国では少数国になっているというふうに認識しております。

 ともかく、世界はボーダーレス化しておりますし、グローバルな時代に入っておりますので、国籍を異にする婚姻というのは飛躍的にこれからも増加するものと思いますし、母国を離れて外国で長期間居住すると、こういうケースも増えてまいります。そうした状況を踏まえまして、こうした多くの国々では重国籍を認めるという結論を取っているわけでございます。

 国籍を異にする父母から生まれた子が父母両方の祖国で生活し、またその親族と交流し、双方の祖国を理解しようとし、双方の祖国ともに極めて強い帰属意識を持つというのはごく自然なことでございます。父母双方もまた我が子に双方の国籍を持たせたいと願うのは当然の感情であろうと思います。

 人権尊重の面からも、国籍を一つだけ選択させるという日本の国籍法はもはや国際化の時代に合わないと、重国籍化の方向に向かっている世界の流れにも合わない。是非、大臣、法務省の中に研究会等を立ち上げるなどして前向きに、真剣にこの問題を検討すべきときに来ていると思いますが、御見解を伺わせていただきたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君) 本当、先生の貴重な御意見いただき、本当に受け止めさせていただきたいというふうに思っております。
 重国籍をめぐります問題は、やっぱり国家という観点からも関連する大変重要な問題でございます。それはもう十分理解しているところでございまして、それらの議論を深めていくということも大切なことだろうと思いますが、今、あした、あさって委員会を開くということについては今ちょっとまだ考えておりませんので、十分と検討させていただき、国際的な問題とも関連しながら鋭意検討していきたいというふうに思っております、先生の御提案でございますので。よろしくお願いします。

浜四津敏子君 是非とも早急に検討していただき、現実に前に一歩踏み出していただきたいと思います。


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