民主党 高山智司議員の質疑抜粋

第164回国会
衆議院 法務委員会 第30号
平成十八年六月十三日(火曜日)

 出席委員
   委員長 石原 伸晃君
   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君
   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君
   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君
   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君
      赤池 誠章君    稲田 朋美君
      近江屋信広君    太田 誠一君
      笹川  堯君    柴山 昌彦君
      下村 博文君    長崎幸太郎君
      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君
      森山 眞弓君    矢野 隆司君
      保岡 興治君    柳澤 伯夫君
      柳本 卓治君    石関 貴史君
      泉  健太君    枝野 幸男君
      河村たかし君    小宮山泰子君
      福田 昭夫君    細川 律夫君
      横光 克彦君    伊藤  渉君
      保坂 展人君    滝   実君
      山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君
   法務副大臣        河野 太郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

○高山委員 また、国際結婚が今ふえてきているということで、その問題に関しましてはまた後で質問いたしますけれども、今大臣のお話にもありましたように、EUの方は、国際私法というより域内でどんどん統合をしていこうということで熱心だというようなお話がありました。

 実際、今、東アジアでの域内貿易がもう五五%を超えてほとんど域内での貿易が多くなってきている、こういう現状を踏まえて、日本も国際私法のあり方を、日本中心というのも変ですけれども、国際戦略上どう位置づけて今後やっていくつもりなのか、あるいはそういうつもりが全くないのか、ちょっと大臣に伺いたいと思います。

○杉浦国務大臣 私法の分野というのは、それぞれの国の歴史、伝統、文化、宗教等絡んで、相当独自なものがあるわけですね。例えば中国、韓国、日本というのは儒教で共通点がありますし、漢字文化がもとになったということもあって比較的似ている部分もあるわけなんですが、東南アジアになると、これはもう本当にさまざまなんですね。

 例えば、ハーグと申しますか、西側世界で、離婚した場合に、子供を連れて奥さんが帰っちゃう、例えばアメリカ人と結婚した日本人が子供を連れて日本へ帰っちゃう、そういう場合に、条約で、ともかくもとへ戻せというような条約があるようです。締結されている、日本は入っていませんけれども。EUなんかですと一体になるわけですから、国の間といったって、日本では県の間ぐらいの感じになるじゃないですか。だから、そういう場合には、国の力で一たん戻して、そこで決着をつけてから帰しなさい、帰るなら帰れというようなことが議論になっていて、そんな条約もあるようなんですが、では、それに日本が入れと言われたら、これは相当問題があると思うんですね。

 ですから、国際化の進展というのは一方では事実でございます。国際結婚も、タイとの間もあり、フィリピンとの間、いろいろございますから、それぞれの国の法制との調整を図っていくということはもう絶対必要ですので、後ろは向けませんですが、しかし、それぞれの国の私法の世界がございますので、調和を図っていくという意味で協議の場を設けることは必要だと思いますし、日本がいち早くハーグに参加したのは、これはいいことだと思うんですけれども、ヨーロッパにおいて、日本が初めて、その後、最近幾つか入っているようなんですけれども、そういう協議の場というのは大事だと思います。

 私人の間でトラブルが起こった場合にどう対応するかという問題ですから、イニシアチブをとっていくことも必要だとは思いますが、余り無理はできないといいますか、やはりそれぞれの国の事情があるわけですから、お互い相談しながら、どうしましょうかねということではないでしょうか。

○高山委員 僕は、東アジア経済圏というのを将来見据えて、その中での通則というんでしょうか、そういうのもちょっとお考えになってはというような趣旨で申し上げたんですけれども、大臣のお考えは今はっきりわかりましたので、それはそれで結構でございます。

 今、大臣のお話の中にもありましたけれども、ハーグの方では子供を連れて帰っちゃったら一回国の力で戻してなんて、随分、そういう法律というか国の力で家族が引き裂かれていくようなことは、日本人の感覚としてはやはり合わないものがあるなというような気も私はいたしました。大臣もそういう趣旨でおっしゃっていただいたんだと思うんです。

 この点、今、大臣おっしゃったように、いろいろな国の人との間で結婚も進み、子供も出てくるということでございますけれども、無国籍だとかあるいは重国籍ということでいろいろな問題が生じていると思うんです。

 無国籍の問題についてまず伺いますけれども、日本は、無国籍というのはどういう弊害があるのかということと、これを解消するためにどういう努力を今までされてきたかということ、これを伺いたいと思います。これは副大臣でしょうかね。

○河野副大臣 無国籍になりますと、国の保護が当然受けられません。我が国は、例えば両親が無国籍の場合に、日本で生まれた子供には日本の国籍を与える、そういうようなことを行っております。

 ただ、今現実に問題になっておりますのは、我が国はパレスチナを国家として承認しておりません。パレスチナ人の御夫婦が日本にいらっしゃって日本で出産をされた場合に、日本側から見ると、無国籍の夫婦に産まれたお子さんということで、日本国籍を与えております。こういうケースがもう既に二けたになっております。向こう側から見れば、パレスチナ国家と日本国家の二つの国籍を持っているということになるんだと思いますが、いずれ中東紛争の中で日本国籍を持った方の邦人保護の問題ですとか、あるいはそういう方がテロ行為に加担をしたりすると日本の国家も当然のことのように巻き込まれることになりますので、こうした問題が起きないように、なるべく早く無国籍になるような状況の解消に努めてまいりたいと思っております。

○高山委員 今副大臣からお話がありましたように、無国籍の問題でやはり一番被害を受けるのは子供だと思うんですよね。それで、アメリカなんかだと、不法移民の子供であっても教育を受ける権利はある、学校に行くことはできるんだというお話もありますけれども、今副大臣、日本では国家の保護を受けられないということでした。

 例えば、日本では、そういう無国籍の子供というのは、学校に行ったりあるいは病院に行ったりしたときに何か保護を受けたり、こういうことはやはりできないんですか。

○河野副大臣 国内で学校に行く、病院に行くというのは、国籍の問題といいますか、それは社会保障制度の問題、あるいは義務教育制度の問題になるんだろうと思います。

 法務省の中でプロジェクトチームで外国人労働者の問題をずっと研究してまいりましたが、外国から来られて日本で働いている方々の子供に関しても、やはり日本人の子供と同じような義務教育をきちっと適用して、御両親には、子供に教育を受けさせる、そういう義務を課して、国としてはそういう子供たちもしっかり教育を受けられるようなサービスを提供する、社会保障に関しましても、社会保険の本人負担分はきちっと払っていただいて、採用する側は企業負担をちゃんと払っていただく、そういうような制度を国籍を問わずやはり適用していく。あるいは、現にそういうルールになっているならば、きちっとそういう運用をしていくべきだろうと思います。

○高山委員 今副大臣からいい答弁をいただいたので、ちょっとこれは通告していないのであれなんですけれども、国際条約で、教育のときに、要するに外国人に対する教育に対する配慮か何かの規定があって、それを日本の方では受け入れていないというような話がたしかあったと思うんです。

 それで、私が言いたいのは、今教育基本法の議論をしているときに、自民党案も民主党案もそうなんですけれども、外国人の子供に対する教育ということに関して記述がないというか、配慮が全然ないわけなんです。実際、これは、今副大臣がおっしゃいましたように、福祉の問題であったり、あるいは教育行政だから文科省の問題なのかもしれないんですけれども、私は、やはり無国籍というものが生じてしまうということが一番そういう問題の遠因になっている気がするんです。

 これは大臣でも副大臣でも構いませんし、事実関係のことであれば政府参考人でもいいんですけれども、今、日本では外国人の子供に対する教育の配慮ということで何か特別なことをやられているんでしょうか。ちょっとわからないですか、何かありますか。

○河野副大臣 例えば自治体の中には、浜松だったと思いますが、浜松市内に住んでいらっしゃるブラジル人の子供をしっかり義務教育に引き取るために、一億五千万円程度の教育の人件費を自治体が負担しております。そういうケースもございます。

 一般的な話になりましては文科省の担当なものですから、調べて、後ほど御連絡をさせていただきたいと思います。

○高山委員 どうも済みませんでした。

 では、無国籍はこのぐらいといたしまして、無国籍と重国籍とどっちが問題なのかというのはなかなか難しいんですけれども、この重国籍というのはどうして生ずるのかということと、もう一つ、重国籍になると何か不都合があるんでしょうか。これは事務的なことですから、別に政府参考人でも結構ですけれども、では、副大臣。

○河野副大臣 昭和六十年でしたか、国籍法を両系主義に変更いたしましたので、日本人のお父さんあるいは日本人のお母さんが外国の方と結婚をして生まれた子供は、相手の国が両系主義をとっている場合には、必然的に重国籍になります。

 重国籍の何が問題かといいますと、例えば領事保護で二つの国がバッティングをする、あるいは、日本国籍を持っている方が相手の国に徴兵制などがある場合には徴兵にとられてしまう、そうした場合にどうするか。あるいは、今でも起きておりますが、例えば、外国のパスポートで入国をしてこられた二重国籍の方が日本のパスポートで出国をすると、当然に統計は混乱をいたします。また、別々な名前を名乗ることが可能になりますので、婚姻関係その他、身分関係も若干複雑になる、場合によってはどちらかの国の法令違反になる、そういうケースも考えられます。

○高山委員
 ちょっと一つ一つ伺いたいんですけれども、まず、身分関係に混乱をというのは、二つ名前があるので、例えば日本とフランスとかで違う名前でもって二つ結婚してしまうとか、そういう問題があるということだと思うんですけれども、これは、そんなに国が禁ずることというよりは、それぞれの奥さんの方で、何なのあなたはということで、個人的にやり合ってもらえば済むというレベルの話ではないでしょうか。これはこんなに禁ずるほど大変なことでしょうか。どうですか、まず副大臣に意見を伺いたいんですけれども。

○河野副大臣 婚姻に関しては法律で定めているわけですから、それぞれの奥さん、あるいはそれぞれのだんなさんになるのかもわかりませんが、どうぞ御自由にやってくださいというわけには、これはなかなか国家としていかないんだろうと思います。やはり身分関係はきちっとする、我が国は重婚を禁止しておりますので、そうしたことがないように、そこはやはりはっきりしないといかぬと思います。

○高山委員 それとあともう一つ、外国の軍隊に入ってしまうというような話がありましたけれども、実際にそういうことで何か問題が生じたことはあるんですか。

○寺田政府参考人 現実に、特定の外国の軍隊に日本人との二重国籍者が入ったことによって外国との間でそれが外交問題になったということは、今まではないというように私どもは承知しております。

○高山委員 そうしますと、そんなに目くじらを立ててということではないですけれども、仮に、今そういう重国籍の人が本格的に日本を攻撃してきたら、それは、例えば国籍の問題が仮に整理されていても十分問題になり得ることだと思いますし、私は、日本が攻撃されるときに国籍の問題が重要になるのかというのは、ちょっといまいちぴんとこないんですけれども、よく法務省からこういう説明を受けるんですけれども、ちょっと副大臣、もう一回、ここを本当に納得できる説明をしていただけますか。

○河野副大臣 徴兵制度の問題は、日本の国籍を持っている人が外国の軍隊に入る、そのことによって、例えば邦人保護との兼ね合いをどうするかということ自体がもう既に問題なんだと思うんですね。日本国籍を持っている人が外国の軍隊に徴兵されて、その国と日本が戦争になった、さあどうする、もちろんそういう問題もありますが、日本国籍を持っている人の邦人保護の問題を考えても、徴兵制がある国との二重国籍で日本人がその国の徴兵に行くということも、やはりそれ自体問題なのではないかと思っております。

○高山委員 そうしますと、副大臣、徴兵で行く場合と、前もいらっしゃいましたけれども、傭兵で外国の軍隊へ入られている日本人の方、日本国籍の方がいらっしゃると思うんですけれども、これはどう違うと考えたらいいんですか。

○河野副大臣 傭兵というのは自分で職業を選択されて行くわけですから、日本人の傭兵の方が海外あちこちでいろいろ戦争活動をやっているというのは日本からしてみると余りいいことではないのかもわかりませんが、それは個人の職業選択の問題であります。

 徴兵の場合には、一定の年齢になった方がその国の軍隊に徴兵されるわけですから、そこはやはり邦人保護との兼ね合いが出てくるんだろうと思います。

○高山委員 そうしますと、本人の意思を結構重視されるということなんでしょうか。そうすると、自分の意思で国籍を選ぶというんですか、こういうことができない子供なんかはまずどうしたらいいんでしょうかね。あるいは、自分の意思で必ず国籍というのは選ばなきゃいけないものなんですか。そのときそのときで、もし本当に戦争に行きたくないのであれば、その人が使い分けるということは可能なんですかね。

○河野副大臣 日本の場合には、出生による二重国籍の場合には、一定の年齢までは二重国籍を認めております。

 それで、国が目くじらを立てる問題かという議論もあります。これは、実は数十万人の方が今出生による二重国籍になっているんだろうと想定をしておりますが、残念ながら、一定の年齢になったので選択をしてくださいということが、これはとても徹底できているという状況にない。徹底できているという状況にないどころか、これはなかなかできない状況でもあります。だからといって、これを、いいですよということにすると、恐らく飛躍的に、ネズミ算式に重国籍の方がふえる、あるいは四重国籍、八重国籍になりかねない。そうすると、身分関係がやはり混乱をする、あるいは旅券の問題等も出てきますので、なかなかどうぞ御自由にというわけにはいかないんだろうと思います。

 ただ、例えば、国籍は幾つあっても、このパスポートでやりますよということが相手の国と合意ができれば、国籍は三つ、四つあるけれども、旅行するときには必ずこのパスポートでやりますというような取り決めができれば、おっしゃるとおり、そう目くじらを立てなくてもいいのかなと思います。現実にはなかなか、そういう交渉も始まっておりませんので、難しいというのが現実だと思います。

○高山委員 今数十万人の方がそういう国籍選択のという話がありましたけれども、きのう、法務省の方からこういう「国籍選択届」というのをもらったんですけれども、実際これを見ますと、「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」というようなことが書いてあります。これを一応日本政府には出す。そうすると、例えば、日本とイギリスとか日本とフランスとか二重国籍だった人は、何かフランスの方で除籍されちゃったり、あるいは市民権を失うですとか、もう日本を決断として選んでいるわけですから、そういうことが何かあるんでしょうか。

○河野副大臣 その届け出を日本政府に出していただきましても、日本政府から別に相手の政府に通告をしているわけではございませんので、その書類を日本政府に出したからといって、相手の国が国籍を剥奪するというようなことは現実にはなかなか起こり得ないと思います。

○高山委員 それでは日本政府は、法務省の方、皆さんやはりまじめなんでしょうか、国籍を選ばせてということなんですけれども、諸外国でこういう国籍を選ばせている国と選ばせていない国と、今実際どういうふうになっているんでしょうか。

○河野副大臣 諸外国もいろいろな対応があるようでございます。

 例えばG8の中で見ますと、日本とドイツは、外国へ帰化をすると自国籍を当然に失う。その他の国は、当然には外国へ帰化したことによって自国籍を失わない。あるいは、欧州評議会の加盟国、オーストリア、モルドバ、スロバキア間では、出生や婚姻により当然に重国籍となった場合にはこれを容認するということになっております。それから、中国、韓国、アジアに目を転じますと、外国への帰化により当然にその国の国籍を喪失するものとなっておりますので、諸外国の対応は二極化していると言ってもいいのかなと思います。

○高山委員 そうしますと、先ほどの法の通則じゃないんですけれども、いろいろな国で国籍に対する考え方が違うというのは、かなり混乱を来す原因になっていると思うんですね。諸外国で、それぞれの国で歴史があるので、あるいはそういう日本みたいな戸籍という考え方がない国もあるでしょうし、これは国際的に統一する必要はないんでしょうかね。どうですか。

○河野副大臣 これはもう国とは何ぞやというのが、日本のような国とヨーロッパの国では恐らく違うんだろうと思います。ヨーロッパの国は、それぞれ王室がつながっているとかいろいろなことがあると思いますので、国とは何ぞやという考え方が違えば、当然国籍に対する考え方も違ってくる。これをそう無理やり一つにする必要があるかといえば、恐らく、それについてもいろいろな考えがあるんだろうと思います。

 そういう国籍に対する考え方はいろいろ差があっても仕方ないということは、これは容認できるのかなという気もいたしますが、法務省にいる立場からいたしますと、国籍はたくさんあってもパスポートはぜひ一つにしてほしい、ここだけは将来的に各国で議論をして、とにかく、国境をまたぐときにはこの身分でいきますよという……(高山委員「各国で指紋とられて」と呼ぶ)指紋で登録するということが各国共通になればそれはいいのかもしれませんが、そこまで言うつもりはございませんが、少なくともパスポートは一冊にしてほしいなというのが、恐らく世界各国の入管の現場の声なんだろうと思います。

○高山委員 パスポートを一つにして入管行政をぴしっとやりたいというのは当然のことだと思います。けれども、そういった中で、例えば、自分は両国の国籍を持っているけれども、どっちも自分の母国だと考えているから、わざわざ外国の国籍放棄なんということを宣言するのは心が痛むというかやりたくないんだ、こういう人も当然いると思うんですよね。

 しかも、今副大臣のお話を伺いましたら、ここに外国籍を放棄しますということを書いたからといって、当然に外国の国籍が除籍になるわけでも別にないということですから、特にここに書いてある、ここの選択宣言というこれは、何でこんなところにこれが書いてあるんですか。

○河野副大臣 法律の規定がございまして、日本の国籍を選ぶ場合には外国籍を放棄する旨宣言をしなければならぬという法律に基づいてその用紙ができておりますので、その旨、そこに記載をしております。

 お話のように、自分の場合は帰化をしたから日本国籍はなくてもいいけれども、自分の子供が将来日本の国籍をとるときに、自分の連れ合いの国籍を放棄するみたいなことが書いてある書面に署名させるのは忍びないから、この文面は何とかならぬか、そういう声もございます。

 今、出生の二重国籍が、そろそろ選択をしなければならぬという年齢に近づいている方も多数いらっしゃいますので、書面のあり方がそれでいいのかどうか、あるいは、数十万人いらっしゃる中でどれだけ把握をしているか、いや、把握すべきかどうかという議論も当然あろうと思いますので、国籍の問題は少しこれから国際化の中で議論をしていく必要があるんだろうというふうに思います。一概に二重国籍を今すぐ認めようというつもりもございませんが、そうした書面のあり方を含め、少しこれから考えていかなければいけない問題だと思います。

○高山委員 今、副大臣、国籍の選択宣言に関しては条文があるのでということでしたけれども、これは確かに、この選択届を見ますと、ここにゴシック文字で「放棄します」と書いてある。その上には「現に有する外国の国籍」ということで書いてあるんですけれども、先ほどの副大臣のお話ですと、ここにイギリス、フランス、日本、アメリカと、自分はここの国籍を持っていると書いた上で、でもパスポートは日本で申請します、これでやるんです、これは可能ですよね、こんなわざわざ選択宣言で放棄とかしなくても。

 そこで、副大臣としても、次に、例えばこの紙なんかをつくりかえて、こういうのはちょっと削除してというような方向で今検討されているんですか。

○河野副大臣 その文言の取り扱いは、少しいろいろな方の御意見を伺ってみたいというふうに思っております。

 それから、パスポートの問題ですけれども、例えば日本とイギリスの国籍を持っている方は、それは、日本では日本のパスポートを発給しますし、イギリスではイギリスのパスポートを発給するわけですから、日本とイギリスできちっと条約でも結んで、両国の重国籍の場合にはどちらか片方しかパスポートを出さないよ、あるいはそれがお互いチェックできる、やはりそういう仕組みがないとなかなか二重国籍でパスポート一つというのが担保されませんので、国家間でそういう取り決めとそれを実行する何か担保になるようなものが将来的につくれれば、パスポート一つで重国籍ということが考えられなくもないというのは、これは私の個人的な見解ではありますが、そういうことも将来的にはあるのかもしれません。

 ただ、今のところ、そういう議論は国際的にもどうもまだないようでございます。

○高山委員 先ほどの大臣のお話にもありましたけれども、経済的な結合だけじゃなくて、やはり域内でどんどん人の移動もふえてくると思いますし、国際的な結婚ですとかあるいは離婚だ、そういうことがどんどんこれからふえてくると思うので、ぜひ、家族や個人がわざわざ何か国の制度によって嫌な思いをする、そういうような制度にだけはしていただきたくないなと。

 確かに、入管行政、一つのパスポートで全部オンライン化してぴしっと決めたいというのは、行政をやる側からすればもう当然のことだと思うんですけれども、ただ、そのために何かわざわざ、その家族にとっては、例えば両国が祖国で、それが自然な状態であるというのを、こういう行政上の都合によって崩していくというんですか、そういうのはこれからの国の制度のあり方として不自然なんじゃないかなと私は思います。ただ、そこは副大臣も大臣もお気持ちは多分一緒だということを顔色から推察いたします。


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