二重国籍容認を求める請願書の要約

−衆議院議員 大出 彰−

1. 本請願書に関連する国籍法の現状

国籍法は、二重国籍を認めていない。その概要は次のとおりである。

○ 20歳以前に外国籍を有するに至った日本人は22歳までに、
  又、20歳以後の場合はその時から2年以内に、いづれかの
  国籍を選択しなければならない(14条)。
○ 法務大臣は該当者に、上記期間内に国籍の選択をすべき
  ことを催告できる。催告を受けて1ヶ月以内に選択しなけ
  れば日本国籍を失う(15条)。

※法務省によれば、当事者の不利益考慮、その他の理由から
 この催告はこれまで一度もなされたことが無い、との事である。

○ 出生により外国籍を取得した日本人で、外国で生まれた
  者は、日本国籍を留保する意思表示をしなければ、
  日本国籍を失う(12条)。
○ 日本人は、自己の志望によって、外国籍を取得した時は、
  日本国籍を失う。
  外国籍を有する日本人が、外国籍を選択した時は、
  日本国籍を失う(11条)。
○ 日本への帰化の要件として、国籍を有しないか、今まで
  有していた国籍を失うべきことが求められている
  (5条1項5号)。

2. 二重国籍が生じるパターン

◎出生による場合
 1)父母が日本人でも、子が出生地主義国で出生した
  ケース(ex宇多田ヒカル)
 2)国際結婚によるケース
◎ 国際結婚による場合
  例えばフランス人と結婚した日本人は、子供がいれば
 直ちに、又、子供がいなくても、協同生活が、2年
 続けば、フランス国籍を取得できる(ex 岸恵子)
 イスラム圏などでは、配偶者に国籍を自動付与する国がある。
◎ 帰化による場合
  日本人が外国に帰化しても、その国が日本に通知しない
  場合、及び、外国人が日本に帰化しても、出身国が国籍
  離脱困難な場合がある。

3. 当事者の不利益

 日本人が外国へ帰化する場合も、外国人が日本へ帰化する場合も、母国籍の放棄という苦渋の選択を迫られる。いわば、自己のアイディンティティを放棄させられるようなものである。また、国際結婚で生まれた子供達は、あたかも、父を取るか母を取るかのような、つらい選択をしなければならない。

4. まとめ

 国籍をめぐる問題は、これまでマスコミ等でもあまり議論されたことが無く、問題意識すら持っていない国民の方が圧倒的であると思われる。最近、永住外国人の地方参政権問題の余波で、国籍法改正の動きが見られる。外国籍のまま地方参政権を認めるより、帰化要件を緩和することで、解決を図ろうというわけである。しかし、一般的な二重国籍容認については、否定的な意見が根強く存在する。そこで、展開される論理は、「国籍は、国家への忠誠の証し」といったワケのわからないものであり、また、「国籍は1つだけ持つもの」という思い込みに基ずく議論である。
 そもそも、二重国籍者の発生を防止することは不可能である。例えば、日本国籍を選択すると宣言しても、オーストラリアや韓国は、自国の国籍には何ら影響しないと明言している。そのような宣言は、「日本国民になる」という、日本国に対しての形式的な意思表明のような意味合いでしかない。二重国籍者は、国際化すればするほど増えていく。
 アメリカを始め、二重国籍を容認する国は、多数存在する。欧州でも、確かに1960年代までは、二重国籍は防止すべきものと考えられていたが、1997年のヨーロッパ国籍条約では、むしろ、二重国籍を容認する方向に変わってきている。
 二重国籍を容認することは、当事者の救済にとどまらず、両国間の絆を深め、どちらの国にも、愛着と忠誠を感じる人々が増えることを意味し、ひいては、安全保障上も得策となる、との論理も成り立つのである。


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