今こそ重国籍の容認を考える超党派議員連盟を

高川 憲之

平成20年9月28日付けの朝日新聞に「二重国籍、ダメですか」と題する記事が一面の扱いで掲載されました。記事は重国籍の容認を求める側の意見と重国籍に慎重な政府の見解を紹介する公平なもので、日頃国籍問題に接することのない多くの日本人に、こうした問題があるということを紹介する貴重な機会となりました。

この記事ではまた、国籍選択制度において、「日本国籍を選ぶ」と申告しても、外国籍から離脱したかどうか当局が調べるのは困難。違反した場合に日本国籍を失う可能性はあるものの適用例はなく、罰則もない。このため重国籍を保持する人が現実には多く、約50万人いるとみられる、などが紹介されています。

法務省が国会答弁で明らかにしたとおり、国籍選択制度によって実際に国籍選択をした人は全体対象者の1割程度、そのうちの半数が外国籍を選択して日本国籍を喪失しています。しかし、日本国籍を選択した人も、実際は外国籍を維持している可能性があるわけですので、国籍選択制度は、外国籍の放棄を求めることも、それを把握することも出来ていない事になります。唯一出来た事は、5%の対象者から日本国籍を喪失させた事です。

平成20年10月8日付けの朝日新聞で、「ノーベル賞日本人3氏」という記事があり、この中の南部陽一郎氏が、アメリカ合衆国に帰化しており、日本の国籍法上日本国籍を喪失していることから、南部氏を日本人として計上出来るのかどうかが話題となりました。ひいては重国籍の是非についても議論が及び、2008年10月11日の産経新聞に「ノーベル賞余波 二重国籍禁止を撤廃 自民法務部会 国籍法改正検討」などの記事が掲載されました。

10月19日のTBS系サンデーモーニングでは二重国籍の問題がテレビ番組として取り上げられました。このテレビ番組では、重国籍を認めることは、偏狭なナショナリズムを押さえる効果がある、世界平和に貢献する人材を生む、などの意見が出され、おしなべて重国籍については寛容な内容だった、との報告が視聴していた方からありました。

自民党国籍PTの座長である河野太郎衆議院議員は、氏のブログで以下の発言をなされています。「国籍法は、国籍に関するルールを決めているにもかかわらず、現実には正直者が馬鹿を見ることになっている。自己の意思で外国籍を取得したら日本国籍は自動喪失するという規定も形骸化している。きちんと法を運用するか、あるいは二重国籍を認めるように国籍法を改正するか、政治として結論を出す必要がある。」

民主党においては、従来より重国籍の容認を求める国会質疑を繰り返して来ました。2002年に大出彰衆議院議員が初めて重国籍の容認に関する国会質疑をされたのを皮切りに、円参議院議員、千葉参議院議員、松野衆議院議員、藤田衆議院議員、高山衆議院議員、岩國衆議院議員が質疑に立たれました。公明党においては、浜四津参議院議員、高野参議院議員が立たれております。

最近の岩國議員(民主)の質疑では、重国籍が日本という社会の中では問題を起こしておらず、重国籍を受け入れる社会的雰囲気はもう十分に雇用者の方でも学校の面でも整っており、日本は国際社会の中で成熟した社会になりつつある、ということを明らかにされています。また、前出の産経新聞の記事では、自民党においても「二重国籍を積極的に認めた方が日本人が世界に雄飛しやすい」(猪口邦子衆院議員)など改正論が根強い、とあります。

今こそ、超党派で重国籍の容認を考える時期に来ているのではないでしょうか。2004年に、衆議院としては異例の、衆議院法務委員会と重国籍容認を求める陳情者との懇談会がパリで開かれました。この懇談会で佐々木筆頭理事が、様々な事情を積み重ねながら、各党で「これなら」と納得できる重国籍容認の法改正を求めて行きたい、と総括されました。佐々木議員は残念ながら引退されてしまいましたが、重国籍の問題は年を追うごとに重みを増しております。是非とも、今こそ重国籍の容認を考える超党派議員連盟の設立を、全ての日本の国会議員の方々にお願い致します。


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